福岡県立城南高校同窓会/校章・名称使用 認証番号 №00002

第28回 講師:押田敏雄さん(Guest講師)=野生鳥獣対策とそれらの利活用=

日 時 9月16日(火)19時~  
テーマ =野生鳥獣対策とそれらの利活用=
講 師 押田敏雄(Guest講師)麻布大学名誉教授

<概要>
 今回の勉強会は特別企画として、他校ご出身の押田敏雄先生をゲストに迎え、野生鳥獣対策と利活用について幅広い知見を伺いました。
 押田先生は麻布大学で長年獣医学教育と研究に従事され、家畜衛生学やジビエに関する著書も多数執筆。現在は「国産ジビエ認証機構」の認証部長を務められ、安全で持続可能なジビエ活用の普及に尽力されています。

 講義ではまず、シカやイノシシによる農林業被害の実態が示されました。2023年度の農業被害は約164億円と依然大きく、放牧地や水田、野菜畑の食害だけでなく、森林の下層植生の消失、鉄道遅延やロードキル、さらには人身事故にまで及んでいることが紹介されました。

 被害の背景として、シカやイノシシの繁殖力と行動特性が解説されました。イノシシは一度の出産で4~5頭を産み、1mの柵を飛び越え、鼻先で50kgを持ち上げる力を持つなど、その適応力と運動能力の高さに驚かされました。これらの生態的特徴が、被害拡大と防除の難しさに直結していることが理解できました。

 対策としては、電気柵やネットによる侵入防止と、収穫残渣や放置果樹の除去など誘因の排除が重要であると説明されました。また、捕獲においてはワナや銃猟が活用されている一方で、捕獲個体の約90%が未利用のまま廃棄されている現状が大きな課題であることも指摘されました。

 そこで注目されるのがジビエ利用の拡大です。衛生面では「野生鳥獣肉の衛生管理に関するガイドライン」や2018年に始まった「国産ジビエ認証制度」に基づき、安全で安心な流通体制の整備が進んでいます。特に「ジビエカー」による現場近くでの一次処理や、処理施設における洗浄・解体・包装までの衛生導線の徹底は印象的でした。

 食の分野では、学校給食や外食への導入事例が紹介されました。すでに全国の約3分の2の都道府県で一度は給食提供が行われており、カレーやハンバーグなど子どもに親しみやすいメニューが人気を集めているそうです。一方で、安定供給や保護者理解といった課題も残されているとのことでした。さらに、非食用途として毛皮や革製品、動物園での飼料利用、地域おこしやエコツーリズムなど、多面的な利活用の可能性が語られました。

 質疑応答では、マダニ媒介感染症や寄生虫へのリスク対応、気候変動による被害の北上、さらには違法提供や風評被害への懸念など、多岐にわたる議論が展開されました。先生は「認証取得の拡大と捕獲者教育の標準化こそが今後の要」と強調され、科学的知見に基づいた提案を分かりやすく説明してくださいました。

 今回の講義を通じて、野生鳥獣問題が単なる獣害対策にとどまらず、食文化、衛生、教育、地域振興など社会のさまざまな側面と結びついていることを実感しました。押田先生の豊富な経験と研究成果に基づいたお話は、私たち城南高校卒業生にとって非常に貴重で刺激的な学びの時間となりました。

 「城南火山の会」として、他校ご出身の先生から学ぶ今回の特別講義は大きな意義を持つものでした。近いうちにまた他校の卒業生の方々からも学びを得られる機会を設け、交流と知見の広がりを深めていきたいと思います。
 以上。