福岡県立城南高校同窓会/校章・名称使用 認証番号 №00002
第30回 講師:歌野晶午さん(14期生) ミステリーが生まれる瞬間=歌野晶午が語る創作の世界=
第30回 城南火山の会
日 時 2025年11月18日(火)19時~
テーマ ミステリーが生まれる瞬間=歌野晶午が語る創作の世界=
講 師 歌野晶午(14期生) 小説家
司 会 菊地秀之(7期生)
<概要>
30回の節目となる今回は、小説家・歌野晶午氏を迎え、司会の菊地秀之氏との対談形式で「創作の舞台裏」に迫った。歌野氏が今回の登壇を快諾した背景には、菊地氏との“三つの縁”――城南高校の先輩後輩、同じ漫画研究部出身、そして東京農工大学の同窓――があったことが冒頭で紹介され、会場には和やかな空気が広がった。
対談は、同窓会を舞台にした歌野作品『首切り島の一夜』から、殺人事件の小説を妄想する高校生たちの会話を菊地氏が朗読し、歌野氏によるミステリーは、どこから手をつけるのかという話、まさに小説成立の核心である“トリック”の考案から始まった。
歌野氏は、まず読者を驚かせるトリックを考え、そこから人物・動機・舞台設定を逆算して構築していくと語る。しかし、歌野氏にもひらめきは思い通りに降りてこないと苦労を語った。また、読者に“不公平”と感じさせない伏線の置き方、トリックのヒントを物語の中にさりげなく溶け込ませる技術についても触れ、作家の緻密な思考が垣間見られた。
さらに、トリックとプロット(あらすじ)だけでは小説にはならず、どのように読ませる文章にしていくかだと、具体的に文章の推敲過程を教えてくれた。彼と彼女が挨拶を交わす場面。作文のようだった文章が、歌野氏の手によって読ませる文章に変わっていく。「文章は裸を見せるようなもの」と語る歌野氏は、こだわってこだわって文章を直すので、一日僅かしか進まず苦労すると話した。しかも、文庫化の際にはほぼ全箇所に手を入れるという徹底ぶりである。読者には、直したことは気づかれないだろうなと思いながら。
また、同時期にデビューした本格ミステリーの作家たちと比較して次第に本格派としての自信を失っていき、1990年代後半からはトリックで驚かせる作品から作風が変わっていったと話し、『世界の終わり、あるいは始まり』では、トリックより物語を読ませることを意識したと語った。
後半は、理系の大学から小説家という異色の経歴の話。最初は、作家でなく編集者志望で、編集プロダクションに就職。大ファンで全ての作品を読んでいた島田荘司氏との運命的な出会いからデビュー。常にアイデアを考え、閃いたらメモしてストックし、中には十年越しで作品化されることもあるという。長編中心の依頼と短編志向の自身とのギャップなど、創作を取り巻く現実が率直に語られた。
終盤の質疑応答では、読み続けてもらうための工夫、同郷作家・松本清張作品への向き合い方、そしてAIとの共存など幅広い話題が交わされた。世代を超えた縁で実現した今回の対談は、創作の実際に深く触れられる貴重な機会となり、参加者は物語の奥に息づく職人的な思考と情熱を感じ取る一夜となった。
以上

